行政訴訟判決

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  • ◆S53. 2.14 東京高裁 昭和50(行ス)13 被告変更申立却下決定に対する即時抗告申立等事件(16)

 

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。騒音は一段と耳奥まで響き、精神までも掻き乱されるようである。本堂まで路片からわずかに約二〇メートル余でしかない。合掌礼拝する甲の背後から騒音と排気ガスが容赦なく襲いかかつてくる。静寂な境内はもういつのことであつたか、無性に懐かしく想い出され、自動車道路には腹立たしさが込み上げてくるのである。
右が、今日の浄久寺の現実である。宗教施設は、境内地、伽藍等が全体として一つの目的―信仰―に向けて形成されているのであつて、極論すれば、そこに存する一木一草に至るまで、教化の役を荷なわないものはないよう配置されているのである。
ところが本件収用裁決においては、浄久寺の境内地、伽藍等が固有していたこれら宗教施設としての客観的価値は全く無視されたまま裁決がなされたのであつた。
例えば、本件収用裁決においては、

本件道路片からほぼ同一距離(約二〇〜二五メートル)に存する本堂ならびに庫裡のうち庫裡のみについて「改造工法により二階建とする」工事費用の補償を認めながら、本堂については何らの補償を認めようとしていない。しかも、そこで重要なことは、参道付替、庫裡改造の工事費用補償については、起業者は、「寺としての従前の機能の回復及び尊厳の維持等を考慮」して、それらの補償が必要であると判断して裁決の申立をしていることである。(本件裁決書、事実1、(7))。これは、この限りにおいて正鵠を得た損失認定の判断基準の一つと言わねばならないが、それにも拘らず、前記

の如く被抗告人(被告)長野県収用委員会は、本堂を中心とする伽藍、境内地の大部分を損失と認定せずに、本件裁決をなしたのである。
2 従前の裁判例等
寺院の伽藍、境内地の如く、形式的にはそれぞれ別棟または別施設であるが、全体として一体となつている建物、施設の一部の存する土地のみを収用した事例につき、従前の裁判例等は以下の通り正当な判断を示してきた。
(一) 酒造業者の施設建物に関し、形式的には数棟に分かれている各施設建物につき、距離的な近接性と酒造業の各施設という機能的な一体性に着目し、残地上の施設建物の移転についても相

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