行政訴訟判決

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  • ◆S53. 2.14 東京高裁 昭和50(行ス)13 被告変更申立却下決定に対する即時抗告申立等事件(18)

 

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ることができなくなるので倉庫の移転をも認めるべきである。」と述べているのである。
以上の裁判例等を本件にあてはめてみれば、その結論は明瞭であろう。浄久寺伽藍、境内地に、その参道からその両脇の放生池等乃至本堂に至る全体をもつて固有の宗教施設としての機能的な一体性を有したのであつて、そのうち参道、放生池等を収用しておいて、ほとんど庫裡のみの改造補償を行うにすぎない本件収用裁決が如何に補償の原因たる損失の認定を誤つたものであるかは、特に論ずるまでもないであろう。この場合、機能的一体性を有する建物、施設が、営利目的の事業という機能に向けられた一体性を有する場合と、非営利目的の信仰等に向けられて機能的一体性を有する場合とで、そこに差等があろうはずはない。ところが、被抗告人(被告)県収用委員会は、何を思い違いしたのか

、浄久寺という宗教施設のもつ右のような客観的な価値――信仰等に向けられた伽藍、境内地等の機能的一体性――を、「土地所有者がその土地に対する主観的な感情価値及び土地所有者がその土地を特別の用途に用いることを前提として生ずる特殊画値等は考慮を要しないものである。」と、本件とは全く異なる事例に適用すべき理由をもつて、その裁決の理由づけとしているのである。
3 事例的検討と最判の検討
一体、機能的一体性を有する宗教施設の相当部分を収用してそこに高速道路を通しておいて、当該宗教団体は残地のみで可能な範囲の宗教活動を続けてゆけ、などと

いう収用裁決が一般的に妥当するものなのであろうか。それは、否といわねばなるまい。
例えば、奈良の東大寺の大仏殿と南大門の中間に高速道路を造るために土地収用するとして――収用が違法かどうかはこの場合留保して――東大寺の伽藍を、そつくり他に移転する費用の損失補償を認めずして、単に道路部分のみの収用補償ですませた裁決などというものが妥当するであろうか、と考えた場合、その答えは、おのずから明瞭であろう。
原審において、抗告人(原告)準備書面I、第一、一、1、に引用した最高裁判所昭和四九年四月九日のいわゆる富士山頂譲与処分事件判決も

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